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!doctype>今回のシリーズ『魔術から近代科学へ』は次のような問題意識から始まっています。
「近代西欧が略奪国家として世界中を侵略していったことと考え合わせると、アーリア人の守護神信仰もギリシアの自然哲学も近代の西洋科学も全て、略奪集団の自然認識なのではないだろうか。」
前回の第1回目では、近代科学発展の源流に、近接作用説(要素還元主義)と遠隔作用説(魔術的自然観)の二つの流れがあること、そして、その一方の流れである遠隔作用説(魔術的自然観)は、精霊を絶対服従させて望みをかなえさせる、という発想であり、この発想が生まれた背景に、牧畜部族が家畜の飼育を通じて自然を崇拝の対象から、支配の対象に変えていったという歴史があることを明らかにしました。そして、この発想が略奪集団に引き継がれて、ギリシャ哲学、近代科学へとつながっていきます。
今回は、もう一方の自然認識の流れである、近接作用説(要素還元主義)がどのようにして形成されたのか、それは略奪集団の自然認識と言えるのかを、要素還元主義が始めて登場したギリシャ哲学において磁力と重力の認識論が登場する過程を学びながら、考えて行きます。
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山本義隆著『磁力と重力の発見』(みすず書房刊)「第一章」の要約
第一章 磁気学の始まり-古代ギリシャ
1 磁力の初めての「説明」
古代ギリシャ・エーゲ海世界で最初に磁石に言及したのはイオニアのタレス(BC624-546)と言われている。タレスは「霊魂(プシュケー)」の働きを説明するために磁力を持ち出し、万物に霊が備わっていることを主張しているのであって、磁力そのものを説明しようとしている訳でも、まして磁力を新奇な発見として語っているのでもない。このことは当時、磁石の存在やその作用は広く知られていたことを示している。ギリシャ語のプシュケーは生命的なもの全般ないし生命原理そのものを指すようである。タレスの根底にある思想は自然万有に生命の内在を認める物活論であり、磁石の存在はその例証と見られた。タレスは万物は水であるとし自然を始源物質(アルケー)で説明する思想を始めて提起した。それに対して、始源物質が不変ならなぜ事物は様々な様態で存在するのか、変化はいかに説明されるのか始めて答えたのが、ミレトスのアナクシメネス(前六世紀)であった。アナクシメネスは始源物質として空気を措き物質の変化はその希薄化と濃密化によるものと考えた。空気は薄くなると火となり、濃くなると風となり、次いで雲となり、さらに濃くなると水となり、そして土となり石となり、他のものもこれから生ずる。
火を始源とみたヘラクレイトス(BC540-480)の発想もその延長線上にある。タレスの水も、アナクシメネスの空気もヘラクレイトスの火も共に霊魂を有する生命的存在であった。この時代には宇宙全体が生きていたのである。
前五世紀前半のイタリア半島南部エレアのパルメニデスは理性(ロゴス)だけが信じることの出来るもので、感覚は人を欺くと考えた。パルメニデスは「有らぬもの」が有ることは論理的に考えられないが変化や運動はその「有らぬもの」の存在を前提にするゆえに不可能であり、従って生成や消滅あるいは質的変化は見せかけに過ぎないと論じた。その後の哲学にとってこの問いに答えることが焦眉の課題となった。紀元前五世紀後半に、シチリアのエンペドクレスが四元素説を提唱し、ミレトスのレウキッポスとトラキアのデモクリトスが原子論を唱えたのもこの問いに答えるためであろう。
そして磁力に合理的な説明を試みたのも、エンペドクレスとデモクリトス、そして空気を万物を支配するものとみたアポロニアのディオゲネスであった。エンペドクレスは「土・水・空気・火」の四元素を万物の「根」として考える。これはそれ以上還元不可能な構成要素として元素とされている。自然界に見られる様々な物質は四元素のある比率での結合状態であり物質の変化はその分離と混合によると考え、その変化をもたらす基本的作用因として「愛と諍」を想定する。これを現代風に言えば、相互の引力と斥力により定比例の法則に則って結合と分離を繰り返す諸元素となる。
そのエンペドクレスの磁石理論は、磁石と鉄の両方から生じる流出物と鉄からの流出物に対応する磁石との通孔とによって鉄が磁石の方に運ばれるというものである。エンペドクレスはすべての感覚について同様の仕方で語り、個別の感覚の通孔に対して何かが適合することで感覚が成立すると言っている。この次代には物理的なものと生理的なものの間に区別がなかった。